イチハツ
- 2
- 4
一初 一八 別名:トビオクサ(鳶尾草) アヤメ科
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「わしは子供の時分から、菖蒲の花とあやめの花とかきつばたの花の区別が、どうしてもつかんのですが、こりやどうしたもんでござりませう。」
「お前はいくつまで生きてをつた。」
「へえ、七十三まで生きてをりました。」
「七十三。七十三年もしやばに生きてをつて、だね。」
「へえ。」
「それでまだ菖蒲とあやめとかきつばたの区別のつかんのは、だね。」
「へえ。」
「お前が馬鹿だからだよ。」
「ああ、さやうで。」
こんなことをいひ出さねばよかったと菊次さんは思ひました。
もうだまってゐようと思って、菊次さんは口をつぐんで歩きました。
青空文庫「百姓の足、坊さんの足」 新美南吉 より
アルバム: 旅の思い出
お気に入り (2)
2人がお気に入りに入れています
コメント (0)
まだコメントがありません。最初のコメントを書いてみませんか?
コメントするにはログインが必要です。フォト蔵に会員登録(無料)するとコメントできます。